ティツィアーノ 聖愛と俗愛
ステファノ・ズッフィさん著。
森田義之さん 細野喜代さん訳。
聖愛と俗愛
1枚の絵について紙面を100P近く使っていて豪華な本です。
1冊3000円ほど。表紙がしっかりとしていて紙面の印刷も綺麗だからかなかなかお高い。笑
この絵はカンブレー戦争によって引き起こされた悲劇と愛の物語。
イタリア半島の利権を争い、フランス、教皇領、ヴェネツィア共和国、スペイン、神聖ローマ帝国、イングランド、スコットランドと西ヨーロッパを巻きこむ大戦争で。
当初はヴェネツィアVSその他の諸国となり、ヴェネツィアは本土の都市をほとんど失い壊滅的な状況に。
8年ほど同盟の支持対立関係が入れかわりいれかわり抗争が続き、メストレが炎上しヴェネツィアも最期と思われた。
そこでフランス側にヴェネツィアがつき、ヴェネツィア市民の抵抗、農民義勇兵の妨害行動などが起こり、最終的に和平を結ぶことになって、ヴェネツィアはもとの状態にもどることができた。
しかし、ヴェネツィアは統治に復帰するも、市民たちはヴェネツィアへの責任と忠誠を問われることに。
貴族で法律家として慕われたベルトゥッチョ・バガロットは反逆罪として起訴され、有罪となり処せられた。
そんな悲劇の最中、ヴェネツィア市民で十人委員会の書記官であるニコロ・アウレリオはその娘ラウラと結婚。
ベルトゥッチョ・バガロットが法律家で、十人委員会は当時ヴェネツィア最高権限を持つ司法機関だから深い縁を感じますね。
アウレリオはラウラに贈る絵をティツィアーノに依頼し、この聖愛と俗愛が描かれたそうです。
素敵なエピソードですね。
明暗のコントラストを上手く使って過去の悲劇と今とこれからの幸せと祝福が表されているように見えます。
絵の二人の女性には様々な諸説があり、聖愛は左の服を着てる女性で俗愛は裸の女性だと言ってるのもあれば逆もあって。
左側の女性は当時の結婚を象徴する衣装をまとい、銀梅花を握り、それが俗世間での愛。
右側の女性はヴィーナスという説もあるけれど、こちらが聖愛。衣服を身にまとわず左手に持つは天上的な永遠性を示す愛のランプ。
解説によるとこのふたりの女性は補完しあっているそうです。
形式にとらわれすぎず、愛する気持ちをずっと持とうと言ってるようですね。
この絵の面白いところはクピドが真ん中にいることで。
ダヴィンチは例外的に主役は二人と言い残していますが、当時は絵の中心に主役がきます。
センターにいるのは美女ではなく
よそ見してるクピド。笑
カメラ目線じゃないぞ!なんて♡
でも、クピドが何かを夢中になってるところが子どもらしさをありありと表していて
ティツィアーノが自然と歩み、描かかれる人物は生き、動き、その肉は震えていると称されているだけありますね!
イタリアと国交150周年の影響もあってか、昨年はたくさんイタリアの名だたる画家の絵を日本で観ることができて、今年はティツィアーノもやってくる♡
楽しみですね♡